スロウ
スロウ

 

今までの手球と的球が当たったときの反応の説明には、球同士の摩擦やラシャと球の摩擦は考慮していませんでした。
(ドローショットとフォローショットの項は除く)
言ってみれば空気抵抗も物質同士の摩擦も全く無い、架空の惑星でビリヤードをしていたようなものです。

なぜかと言えば、それが全ての物理的反応の基本になるからです。
これから説明する現象も基本的な物理現象を理解して、知識として身に付けていないと、実際にテーブル上で起こる物理現象がどういった原因で起こっているのか判断しずらいからなのです。

実際に球を撞いていると、今までの項で説明したとおりに狙って、そのとおりに手球を的球に当てられたとしても、的球がポケットに入らないなどの現象がよく起こります。

それは、実際にはこの重力も物質同士の摩擦もある地球のビリヤードテーブルの上で球を撞いているからです。

それではこの地球上に戻って摩擦等の影響を見てみましょう。

左図を見てください。

的球Aに対し手球Cをbの角度で撞き出し、Bの位置に当てたとします。
狙いの項で説明したとおり、本来であれば的球Aはaの方向に進むはずです。
しかし、実際には的球Aと手球Bの接触点であるDに摩擦が生じるため、手球Bが進もうとするeの方向に的球Aが引っ張られるようにコースを変え、cの方向に進んでしまいます。(図はオーバーに表現しています)

これが"スロウ"という摩擦による現象です。

このスロウによるコースのズレはボールやラシャのコンディション、手球を撞き出すスピード等によって変わってきます。
実際にはプレイを始めたばかりの時と数時間経過した時とではボールやラシャのコンディションが変わってくるため、それだけでもスロウの出かたは変わってきますが、いずれにしてもボール同士がぶつかる度に大なり小なりスロウは必ず起こっている現象と言えます。

ショットの強弱(手球のスピード)によっても的球と手球の接触する時間に違いがあるため、スロウの出かたが違います。
基本的にはハードショットをしたときよりも、軽く撞いたときの方がズレが大きくなります。

また的球はcのように斜め方向にコースがズレるため、的球が進む距離が長いほど、的球の到達点でのズレが大きくなります。
つまり、スロウが出ていても的球とポケットの距離が近ければ入るが、ポケットの距離が遠くなると入らないという現象が起こるのです。

しかし、実際に手球と的球が接触しているのはごく僅かな時間で、肉眼で確認できるようなものではありません。
スロウはその僅かな時間に起こっているので、現象としては的球が進んだ結果として確認するしかないのです。
しかしこのスロウを知識として知っていないと、その結果からは狙いが外れたのか、それとも正しく撞けているのにその他の影響でコースがズレたのかが判断できないのです。

では、実際にスロウの実験をしてみましょう。

上図の黄色と青色のボールのように、的球を短クッションから2ポイント付近に密着させて置きます。
この時二つの的球の中心点を結んだ延長線が正しく反対側のコーナーポケットの中心へ向かうようにキューなどを使って正確にセットしてください。

そして青色の的球に対しBのように角度をつけた位置に手球をセットし、青い的球に向かって100パーセントの厚みで軽く撞いてみてください。
狙いの項で説明した基本的な物理現象や一般的なビリヤードの参考書の基本説明のとおりだとすると、黄色い的球は必ずAの方向に進みポケットに入るはずです。

しかし、実際にはスロウによりCの方向に黄色い的球が引っ張られてコースをズラすため、Dの方向に外れているはずです。
実際、的球とポケットの距離が上図ぐらいあれば少しハードに撞いてもポケットの上側の角に蹴られてバタバタで外れるはずです。
軽く撞いた場合は平気で図のDぐらいズレて外れてしまいます。

実際のゲーム中は青い的球が無くその位置に手球を当てることになりますが、これは実験上正確にこの場所に力を加えるために置いているもので、この青い的球を置いたときも、直接手球を当てた場合もスロウの出かたは殆ど同じです。

しかし、これだけズレてはスロウという現象を知らなければ完全に厚み(狙い)を間違えた、あるいは正確に当てられなかったと思ってしまうでしょう。

つまり、的球を狙う時にはこの中心線を結んだ延長線上に進むという原理を基本に、その距離や角度、ショットの強弱によるスロウの影響を考慮しながら修正する必要があるのです。

的球とポケットの距離については、当然離れているほどコースのズレは大きくなります。
上図のようなフリであっても、的球がポケットに近ければ入ります。

スロウによるコースのズレがポケットの幅に収まる範囲内に的球があればポケットに入るわけです。
Aのライン上にポケットに近い位置、中ぐらいの位置、遠い位置と同じようにセットして実際に撞いてみれば、どのあたりまで修正無しに入るのかが分かると思います。

ちなみにこのスロウによる影響を受けない配置というのが存在します。
そう、つまりポケットと的球と手球が一直線の状態。
その状態で手球を的球に100パーセントの厚みで当てれば、手球が持っている力の方向と的球が進もうとする方向が一致するため、摩擦があってもコースのズレは出ません。

しかし、ここまでの説明は全て手球が無回転の状態で考えています。(また条件つきか・・・)
実際のゲーム中にはこの手球に押したり引いたり、ヒネリを入れたりと様々な回転を加えます。
この回転が加わった場合もスロウに影響を及ぼします。
特にヒネリの横回転が加わった場合はその影響が顕著に出ます。

これから説明するのはそのヒネリによるスロウの影響についてです。

 

手球の撞点を右にずらし、ヒネリを加えて撞き出したとします。
そうすると、手球は上から見て左方向の横回転をしながら的球へ向かっていきます。

もし手球が無回転で的球に当たった場合は、それぞれの中心点を結んだAの方向に進むはずですが、手球が横回転しながら的球に当たると、球同士の摩擦により手球の回転している方向に的球が引っ張られてBのコースへずれて進みます。(図はかなりオーバーに表現しています)
これがヒネリによるスロウです。

またこの時、球同士の摩擦により「歯車現象」という現象が起こり、的球には手球と逆方向の横回転が加わります。

という事は、本来手球が当たる角度によるスロウと逆のスロウが出るように手球にヒネリを与えてやれば、つまりフリに対して順をヒネってやれば、スロウを相殺することが出来るということです。(と、言葉で説明するのは簡単ですが・・・)

また本来ならポケット出来ないはずの的球を、手球をヒネって意識的にスロウを発生させポケットさせるという方法もあります。





例えばナインボールなどで、右図のように青い2番の的球が微妙にコースをふさいで黄色い1番がポケット出来るポイントへ手球を当てられないといったような時に手球に左のヒネリを加えることでスロウを発生させ、本来なら入らないポイントに手球を当てながらポケットに入れることが出来る場合があります。

実際には手球にヒネリを入れると、手球自身のコースにもズレ(見越し)が出るため、そう簡単に出来るかどうかは分かりませんが、こういった現象を覚えておくと、いざという時に役にたちます。

スロウは物理現象を理解していれば、ある程度はコントロールでき、また利用することもできるものなのです。

まあ、エラソウに書いているわたしも、ちゃんとコントロール出来ているわけじゃありませんが・・・


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