BALL
Cue Stick


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とある国の首相が "IT"という言葉を使って、国民が驚いていたのももう昔話。今は猫も杓子も当たり前のようにコンピュータを使い携帯にはデジカメが付き、世の中すっかりデジタルに侵食されている中、みなさんいかがお過ごしでしょうか?

さてビリヤード界ではいまだに、木の棒の先に滑らないようにチョークを付けて、プラスチックの球をこの辺かなぁって狙ってテーブルの穴に落として喜んでいます。 21世紀だっていうのに・・・



現在のビリヤードのキューの多くはシャフト部分とバット部分の2つに分かれる2ピースキューが主流になっています。

ポケットビリヤード用のキューの素材としてはシャフトがハードメイプル、バット部分にはメイプルやエボニー(黒檀)やローズウット等の色々な銘木が使用されています。
一番オーソドックスでクラシックなデザインが左の写真のようにベースがメイプルでハギやバットエンドにエボニーを使用したモデルでしょうか。
”ジョージ・バラブシュカ”や”ガス・ザンボティー”といった伝説となったキュー職人の時代のデザインですね。

最近はエボニーベースの真っ黒なバットに象牙や樹脂や貝などでハギやインレイを入れたモデルが人気高いです。
”コグノセンティ”というカスタムキューメーカーがこの手のデザイン得意です。

シャフト部分

1:タップ
基本的に皮製です。牛や豚の皮がよく使われます。
このタップとチョークが発明されたおかげで、手球の撞点を変えていろいろなショットが出来るようになりました。
タップの製造方法は、一枚の皮をそのまま成型した「一枚皮タイプ」と呼ばれるものと、複数の皮を重ねて層にした「積層タイプ」、その他に皮を繊維状にしたものを固めて成型した「ファイバータイプ」があり、それぞれ一長一短といった特徴がありますが、わたしは積層タイプが好きで代表格モーリタップを愛用中。

2:先角(フェルール)
その昔は象牙が主流でしたが、現代は高価なカスタムキューとかじゃないと付いてないです。その他のキューは「リネンメラミン」や「アイボリン」といった樹脂製のものが付けられています。
象牙の先角は打球感と音が最高だと言われています。
ギターのナットに牛骨などの動物の骨が使われていることを考えると分かるような気がします。こういった動物の骨は振動の伝達がいいのでしょう。だから撞いたときの音も良くなる。
でも象牙の場合シャフトの先端部分の比重が大きくなるため、「見越し」が大きくなるという話もありますが、わたしは撞いたことないのでわかりません。

バット部分

3,4:ジョイント
ここもキューの性能に大きく影響する部分だと思います。
左の写真がクラシックな「5/16-14山のパイロテットジョイント」
同じパイロテットでも18山というものもあります。その他にも雌ネジが直接シャフトの木材に切られている「木ネジタイプ」、着脱の容易さを求めた「ユニロック・ジョイント」や性能の良さから人気の「ラジアルピン」、また各社独自のジョイントを開発したりしています。
わたしはクラシックなキューが好きなので、「14山のパイロテットジョイント」のやさしい感じの打球感が好きですね。

5:バットのグリップより上(フォアアーム)にあるこういう剣の形をしたデザインをハギといいます。

もともとは装飾というだけではなく、このように硬さの違う木材を組み合わせることで、キューが曲がってしまうのを抑えたり、打球感を変えたりするためと言われていますが、わたしはよく分かりません。ハギには木材を組み木細工のように組み合わせて、それを丸く削ることでこういった模様を出す「本ハギ」と、ベースの木材にその形を掘り込み、違う素材を埋め込む「インレイ」と呼ばれるものがありますが、わたしは本ハギが好みです。でも性能自体はインレイでもまったく変わらないと言われてますので、あくまでわたしの好みです。
このハギの外側にある黒と白のラインが「ベニア」と呼ばれるもので、これも本ハギの場合は着色した薄い木材を組み込んでラインを出します。わたしのキューはベニアが2枚ですが、高いキューには4枚とか5枚とかいっぱい入ってたりします。
キューの値段はデザインによる部分がとても大きいので、ベニアの数が多いと値段も跳ね上がります。

上の写真は4剣というものでハギが4個所に入ってます。
この他にも6剣や8剣などいろいろなパターンがありますが、本ハギの場合、製造方法の関係で偶数のハギが多く、奇数のハギは作るには大変な技術力を要します。

6:グリップ
実際に右手でキューを握る部分です。この写真のようにリネン糸が巻かれているものが一般的です。
このリネン糸にはアイリッシュ地方で取れる品質の高い「アイリッシュリネン」が使われることが多いですね。
その他にも最近人気なのが「皮まきグリップ」で、他にも木そのままの「ウッドグリップ」や中には象牙で出来たものまであります。このグリップのリネン糸の色を変えて巻き直したり、皮まきにしたりといった改造は比較的取り組みやすく、やってくれるショップも多数あるので、キューの雰囲気を変えたいといったときなどはお勧めです。
写真のキューも最初は黒に白ゴマ模様の入ったものだったのを白に黄緑のゴマのに巻きなおしてもらいました。

7:バットスリープ
グリップより下の部分でここにもインレイやハギ、リングといった装飾が施されることの多い部分です。
こういうクラシックデザインのキューではこのバットエンドの木の種類とハギの木の種類を揃えることが多いです。
現代のキューでは、ここにウエイトボルトという重りが埋め込まれており、それでキューの重さやバランスを調整しています。またそのウエイトボルトを変えることでキューの重さを自分好みに変えたりもします。

8:エンドキャップ
バットエンドの下の白い部分です。
これもデザインによって色々なパターンがあり、エンドキャップ自体が無いものもあります。
これも高価なキューには象牙が使われていたりします。
また上の写真のように透明感のある白い素材が「デルリン」と呼ばれる樹脂でバラブシュカやザンボッティが好んで使った素材です。現在でも「TAD」など多くのカスタムキュー職人が好んで使っています。
このバットエンドの下についているゴムが「バンパー」でキューを立てかけたときにキュー尻を保護してます。

このバンパー、今ではほとんどのキューについていますが、実は昔は安いキューにしか付いてなかったらしいです。
なんかバンパーが付いているキューは安物というイメージがあり、カスタムキュー職人などはあえて付けることを避けたようです。現在はその必要性が認められているので、100万円するキューにもちゃんと付いてます。


ビリヤードの歴史は実はハッキリしてなくて、発祥の地についても、ヨーロッパ説や中国説、エジプト説など色々とあります。最初は石の球と木の棒を使った屋外で行う遊びとして始められたようです。

その後ビリヤードは中世ヨーロッパ、特にフランスで発展し、屋内スポーツなっていったと言われており、キューもそのころから様子を変えていたったようで、18世紀頃にはヨーロッパにおいてキュー製作は立派な技術として確立していったようです。
そのころからキューには金属類や象牙などの装飾が施されており、後のアメリカ製のキューにも多大な影響を与えています。そして1900年頃からアメリカがビリヤードキューの世界一の生産国になっていったようです。

この時代は多くの人が「ビリヤード黄金期」と呼び、それに大きく貢献したのが現在でも知られる「ブランズウィック社」です。伝説のキュー職人”ジョージ・バラブシュカ”も最初はこのブランズウィック社の「タイトリスト」という1ピースキューにジョイントを付けて2ピースにし、グリップやデザインを施して、カスタムキューを製作していたようです。

このころのキューは1ピースキューと呼ばれる分割できないなタイプのものがほとんどでした。
最初はプロプレーヤーが各地に遠征に行く際の利便性を考えて、シャフトとバットを分割できる2ピースキューが作られるようになったのですが、これにより現在のキュー製作にまでつながる製法へと発展していきます。
最初のころは2ピースキューのジョイント部分は単に木材に雄ネジと雌ネジを切っただけの物だったのですが、これではあまりに強度が無いため、金属製のジョイントが開発されます。
しかし木材の中心に金属が埋め込まれるため、それまでの1ピースキューに比べて重心がキューの中心にくるようになってしまいます。それまでの1ピースキューは先が細く後ろが太いために、当然のことながら重心はグリップ側にありました。そこで、それまでのバランスを保つためにキューの一番うしろにも金属製のネジが埋め込まれるようになり、現在のウエイトボルトの発想が生まれます。

しかし物事はなかなか上手くいかず、中心と後ろに金属が入れられたキューは当然のごとく重くなりプレーに支障をきたすようになります。現代のようにアルミやステンレスといった軽量で強度がある金属が無く、多くは真鍮やニッケルが使われていたためです。

この問題を解決したのが、現代のビリヤードキューの父と言える”ハーマン・ランボウ”というキュー職人です。
彼はキューのバットの中心部分にあたるグリップの部分により軽い木材を使うことで、キュー全体のバランスをとるという手法を考え出し、現在ではキュー製作の常識になっています。

現代の主流なキューの製作方法は基本的にこのころから変わっていません。
しかし、現在はキュー製作にも新しい技術が使われ始めてきており、これからは過渡期に入っていくような気がします。
ビリヤードキューはその素材のほとんどが天然素材で出来ていますが、最近はグラスファイバーのシャフトなど、色々な素材が試されるようになってきています。これからはキューに使われる各銘木もますます貴重なものになってくるはずです。
近い将来にはハイテク素材で作られたキューが主流になり、「昔はビリヤードのキューは木で出来ていたんだよ」なんて会話が普通にされる日がくるかもしれません。

現在はキュー製作にもいろいろな背景があり、その背景により大別して「プロダクション・キュー」と「カスタム・キュー」に分けられます。

プロダクション・キューとは文字通り「量産型」のキューです。
大手メーカーの工場ラインにより一定の規格で大量に同じモデルが作られるキューを指します。
大量生産の為、価格を低く抑えることができ、ハウスキューに導入されるような低価格なものから、カスタム・キューにも匹敵するぐらいに高価(と言っても30万以下ぐらいが上限でしょうか)なものまで、ラインナップも豊富です。
日本の「ADAM」や「Mezz」、海外では「ルカシー」や「キューテック」、「マクダモット」、「メウチ」など数多くのメーカーがあります。
大抵の人は、最初のプライベートキューとしてはこのプロダクションキューの中から自分のニーズに合ったキューを選んでいます。

「カスタム・キュー」とは、有名な職人さんが個人経営で作るキューを指すことが多いようです。
キュー製作の殆どの部分を熟練した職人さんが手作りで行うため、工場の生産ラインで作られる製品とはやはりひと味もふた味も違う、すばらしいキューが沢山あり、美術品と呼んでも差し支えないようなキューも少なくありません。
一般的には「メーカー名=職人さんの名前」というパターンが多いようです。
「TAD」や「Gina」(Ginaというのは職人のアーニー・ギュレス氏の愛娘の名前だそうです)、「Richard Black」、そして「バラブシュカ」や「ガス・ザンボッティー」など今や伝説となっているキューメーカーまで、こちらも数多くのメーカーが存在します。
しかし、基本的にその職人さんの個人経営という場合が多いので、バラブシュカのように後継ぎがいないと一代限りとなってしまいます。

カスタムキューは性能面(撞き味)でも職人さんの特徴が強く出る場合があり、中にはちゃんとしたキューの振り方を知っている上級者じゃないと扱えないような「じゃじゃ馬」なキューも多く存在します。
しかし、その「じゃじゃ馬」を使いこなすのも上級者の楽しみであり、愛着が湧く部分なのでしょう。

20年ほど前、まだ日本ではアメリカ製のカスタムキューと言えば、日系アメリカ人のタッド・コハラ氏が作る「TAD」ぐらいしかなかったころ、この「TAD」はじゃじゃ馬で有名でしたが、一部の上級者が自分の技術を誇示するかのように「TAD」を使いこなすことがステータスのような時代があったようです。
使い手を選ぶキューですが、使いこなした時には「TAD」でしか味わえない素晴らしいポテンシャルを発揮したそうです。

TADも息子のFred氏が製作を担当するようになり、ゲームもナインボールの時代になった現在では昔のようなじゃじゃ馬はなりを潜め少しは撞きやすいキューになったという話も聞きます。
TADが扱いやすいキューになってしまうと、少しさびしい気もしますが・・・「じゃじゃ馬」への憧れとして・・・

このTADは、「いつかはTAD」と誰もが憧れるカスタムキューで、わたしも例外ではありません。TADのオヤジさんが少しでも製作に関わっているうちに、ぜひ手に入れたいと願っています。

他にも「Gina」や「ザンボッティー(現在は息子のバリーが製作)」など、カスタムキューの世界にはビリヤード好きの誰しもが憧れるキューメーカーが今でも素晴らしいキューを作りつづけています。

カスタムキューの中にも、ある程度の生産体制を整えて、同じモデルをレギュラーモデルとしてある程度の数を生産しているもの(セミ・プロダクション)と、1本物、多くても数本程度で職人が丹精こめて手作りで作る(リアル・カスタム)とがあり、当然後者の方が高価になります。
人気の職人さんのリアル・カスタムでデザイン的にもファンシーなものとなると、日本国内での購入金額は50万円ぐらいからのスタートとなるでしょう。

ガス・ザンボッティーなどは本当に一人一人のユーザーの体型や好んでプレーするゲームの種類をオーダー時に聞いて、キューの重さはもちろん、長さや撞き味までその人のプレイに適したキューを作っていたそうです。
まさに世界に一本の自分のためのカスタムキューです。

こうやって考えると、卓越した職人技と木のぬくもりが感じられるキューの時代に球を撞ける自分は、良い時代に生きているような気がします。

参考にならない(をい!)”はじめてのマイキュー選び”はこちら


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